書く物語がなければ簡単なおとぎ話から作ることを始めたらどうだろう?

物語
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書く物語がなければ簡単なおとぎ話から作ることを始めたらどうだろう?
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小説とか物語を書こうと意気込んで、ノートやパソコンに向かっても何も思い浮かばない場合や、アイデアが浮かんでもどこから書けばいいかわからない時は、肩の力を抜いて簡単なおとぎ話を作ってみたらどうだろう?

おとぎ話の良いところは、

  • 細部にこだわらず、専門の知識がなくていい。
  • 自由にありえない発想をして構わない。
  • 話の展開が早く物語の完成が早い。

おとぎ話の条件としては、

  • 勧善懲悪の物語で善悪の対決や対比がある。
  • 善が勝ち悪が負ける。
  • 何かの教訓がある。

これらは私の考えるおとぎ話の要素だ。とりあえず、良い人(もの)と悪い人(もの)を考えれば、自然と物語が展開していくような気がする。その前に時代や舞台設定はどうだろう?これもお決まりの「昔むかしあるところに」か、敢えて明確にしなくて済むようなら、現代を想像させることでもで良いことにしよう。

良い人(もの)を考える

私の考える良い人(もの)の典型は次のような人物(もの)だ。

  • 誠実・親切で勤勉:人の悪口など言わずに笑顔で毎日せっせと仕事に汗を流している。
  • 姿かたちは美しい:何も飾らなくても生まれつきの美男美女。
  • 何かのハンデを負っている:貧乏だったり、障害を持っていたり、家族が悪かったり、本人のせいではないマイナス要素を抱えている。

良い人(もの)を具体化する

細かく考えると前に進まないので、大雑把に良い人(もも)を考える。それには考える元=種が必要だ。

  • いま世間で話題になっていることは何か?
  • 目の前に見えるもので何かヒントになるものは無いか?

この2点について考えて見る。

  • いま世間では米の値段が高くて困っていたり、近づいた選挙のことが話題のようだ。
  • 私の目の前には、小さな首からかけるような扇風機、おもちゃのような鉛筆削り、簡易血圧計、電卓、ボールペン、ハサミ、スティックのりなどが見える。

話題から選ぶとしたらお米。目の前のもので選ぶなら鉛筆削りにする。

  • お米からのヒント:百姓の子供、百姓の老人などの良い人間。
  • 鉛筆削りからのヒント:擬人化した鉛筆削り。良い鉛筆削り。

2つのヒントから、今回は鉛筆削りを選ぶことにする。主人公は良い鉛筆削りだ。

良い鉛筆削りのプロフィール

鉛筆削りを、私の良い人のタイプに当てはめて見る。

  • 毎日文句も言わずにせっせと鉛筆を削っている。短かくなってもう使えなくなる鉛筆が来たら、「よく頑張ったね」と涙を流し、新品の鉛筆が来たら、「芯が折れてもくじけずに頑張れ」と励ます。
  • 長く働いてきた鉛筆削りは、もう刃が欠けて削りにくくなっている。鉛筆削りの持ち主は、「もうこの鉛筆削りも替え時だな」などと言っている。かなり老いた鉛筆削りだ。
  • この鉛筆削りには可愛い顔が書いてあり、犬か猫のような愛嬌がある。

悪いものを考える

主人公の良いものが決まったので。良い鉛筆削りに対する悪いものを考えてみる。

  • 断面が丸くて滑りやすく、芯の材質が硬い鉛筆。上手く削れない主人公を馬鹿にして、「老いぼれは早く引退しな!」などと暴言を吐く。まだ若くて勢いがあり、女の赤鉛筆や青鉛筆を連れ歩いている。
  • 持ち主から重宝がられていることをいいことに、周りの鉛筆や消しゴムなどにも威張り散らしているから、みんなから嫌われている。でも誰も表立って逆らえない。

善と悪の対立シーンを考える

物語の一番の山場、クライマックスはどんなシーンだったら面白いかを想像してみる。物語の初めから順序だって考えるとなかなか進まないので、大きな部分を先に考えてしまえば後が楽だろう。何パターンか考えてみる。

  • 悪い鉛筆が、「持ち主がお前を長く使いたいから修理に出してくれるってさ」と鉛筆削りをそそのかして、実は黒鉛筆が呼び寄せた廃品業者に渡してしまおうとするが、悪い鉛筆の悪だくみを知っていた赤鉛筆の裏切りによって、他の鉛筆や消しゴムたちが力を合わせて廃品業者から鉛筆削りを助け出す。赤鉛筆は以前から鉛筆削りに好意を持っていたことがわかる。
  • 悪い鉛筆が目障りな鉛筆削りを壊してしまおうと、子分の鉛筆に命じて鉄芯入りの鉛筆になれと命じられる。子分の鉛筆の母親は病床にあり、悪い鉛筆から面倒をみてもらっている弱みを握られていた。悪だくみを決行する日、子分の鉛筆は最後の別れを告げに母親の顔を見に行く。ただならぬ気配を察した母親が息子を諭し、改心した息子は悪い鉛筆を裏切り身につけた鉄芯で悪い鉛筆に体当たりして折ってしまう。
  • 悪い鉛筆が甥の若い鉛筆削りを連れてくる。若い鉛筆削りは悪い鉛筆に似て意地が悪く、良い鉛筆削りの仕事を奪っていく。仕事がなくなった鉛筆削りは自信をなくして持ち主のところから去っていこうとする。別れを惜しむ他の鉛筆や消しゴムたちは、若い鉛筆削りに削られた鉛筆たちを説得して持ち主に訴えてくれるようにお願いする。若い鉛筆削りは手抜きをしていて削った鉛筆は直ぐに芯が折れてしまっていた。しかし悪い鉛筆に脅されて口止めされていたのだ。説得された鉛筆たちは勇気を出して持ち主に本当のことを告げる。

いずれにしても、鉛筆削りの絶体絶命の危機をあぶないところで乗り越えるシーンになるのだが、私の拙い想像力では、どうしても良い鉛筆削り単独の解決よりも、周りの仲間たちの勇気などで解決する物語になってしまった。

しかし、仲間たちが良い鉛筆削りを助けようと決心するのは、それだけ良い鉛筆削りの性格や行いが信頼を得ているということになる。

この物語の教訓と構成

おとぎ話にはわかりやすい教訓がなければならない。

  • 一人ひとりは弱くても、力を合わせて勇気を出せば、強いものを打ち負かせる。
  • 誠実や真心は、最後には人の心を動かし勇気を与え、正しい行いに導く。

良い鉛筆削りの誠実な人柄や、ひたむきな勤勉さを物語の前半で描き、中盤は悪い鉛筆の意地悪さや権力を描き、後半は良い鉛筆削りの危機と仲間たちの団結や勇気による悪い鉛筆との対立から勝利を描くという構成が見えてきた。

前半

老いた鉛筆削りは、傷んだ体をいたわりながら、毎日鉛筆を削り続けている。妻の消しゴムは何年も前にすり減って亡くなり、鉛筆削りは今は一人で暮らしていた。

鉛筆削りは苦労してきたこともあり、短くなった鉛筆がくると、「よくここまで頑張って来たね、ご苦労さま」とねぎらいながら、目にはうっすらと涙を流した。新しい鉛筆が来ると、「苦しいことがあっても負けちゃだめだよ」と励ましていた。

最近鉛筆削りから「ギー、ギー」という音が聞こえるようになった。持ち主の口から、「そろそろお前ともお別れになるのかな」などという独り言が聞かれた。

周りの鉛筆や消しゴムたちも、鉛筆削りを心配して、刃を掃除したり油をさしたりして気遣っていた。

中盤

平和だったところに、ある日悪い鉛筆がやってきた。両側にはミニスカートからきれいな長い足を伸ばした赤鉛筆と青鉛筆を侍らせていた。

悪い鉛筆は、世界最硬度といわれている10Hよりも更に硬い15Hというとてつもない硬さを鼻にかけ、持ち主の機嫌を取りながら好き放題に振る舞うようになる。

悪い鉛筆は金回りも良く、毎日高級車に赤鉛筆と青鉛筆を乗せて夜の街に出かけては大盤振る舞いをしていた。次第に悪い鉛筆のおこぼれにあやかろうとする鉛筆や消しゴムも現れてくる。

鉛筆削りの仲間たちは、黒鉛筆への不満を陰では囁いていたが、悪い鉛筆の前では怖くて何も言えなかった。そんな中で、鉛筆削りだけは、「あんまり羽目を外すと持ち主に嫌われるよ」と忠告することもあり、悪い鉛筆は次第に鉛筆削りを目障りに思うようになる。

後半

(物語のクライマックスは、3つの内、子分の改心による裏切りの案を選ぶことにする)

鉛筆削りを追い出したいと思い始めた悪い鉛筆は、気の弱い子分の鉛筆を呼び出し、「今度鉛筆削りに削ってもらう時には、鉄の芯と入れ替えて入れ、わかったな」と命じた。

この子分は、病気の母親の入院費の面倒をみてもらっていたので断れなかった。悪い鉛筆は同情心から金の工面をしたわけでなく、いつか鉛筆削りを追い出す時に利用するつもりだったのだ。

鉄の芯を仕込んだ鉛筆を鉛筆削りに入れるということは、鉛筆削りの刃を壊して命を奪うことを意味した。それだけでなく、そんなことをした子分の鉛筆自身も持ち主から廃棄され死ぬことになる。しかし、母親思いの子分の鉛筆は、悪い鉛筆の言うとおりにするしかなかった。

いよいよ決行する日がやってきた。子分の鉛筆は鉄芯に入れ替えた後、母親の顔を最後に見ておきたいと病院に行く。青ざめた表情の息子を見て、母親は息子の異変に気づく。平静を装ってごまかそうとする息子に、「ごまかしてもだめだよ。何か困ったことでも起きたのかい?」と心配する。

「お前は優しいけど気が弱いから心配だよ。誰かに馬鹿にされても怒っちゃだめだよ。おてんとうさまは見ているからね。正直でいるんだよ。怠けちゃだめだよ、見ているからね、おてんとうさまは」そういうと、母親は咳き込んだ。息子は母親の背中をさすった。

母親の言葉に息子は、自分が間違っていたことに気づく。「こんなことをして、お母さんは悲しむだろう。お母さんを悲しませることなんて僕にはできない」そう心の中でつぶやくと、「お母さん、早く良くなっておくれよ。また明日来るからね」そういうと子分の鉛筆は、意を決したように病室を後にする。

「用意はできているだろうな。心配するな、お母さんのことは俺がずっと面倒を見るから。しっかりやれよ」悪い鉛筆はそう言うと、子分の鉛筆の肩をたたいて念を押すと、自分の車に乗せて鉛筆削りのところまで送った。

「俺はここで見てるから、しっかりやってこいよ」車の中から見送ろうとする悪い鉛筆に、「あの、鉄の芯が重くて足元がフラつくので、鉛筆削りに怪しまれないか心配です。すみませんが、鉛筆削りのところまで体を支えてもらってもいいですか?」子分の鉛筆は額に汗をにじませながら言った。「しょうがねえなあ」そういうと悪い鉛筆は子分の鉛筆を横から支えて歩き出した。

いつも一人でくる子分の鉛筆が、今日は体を支えられてやってきたのを見て、鉛筆削りは心配して声をかけた。「おや、どうしたの今日は?体の調子でも悪いの?」その言葉に、悪い鉛筆はすかさず返事をした。「少し食べすぎて腹を壊したみたいだけど、なに、たいしたことはないよ。な?」と子分の方にに目を向けた。子分は下を向いたまま力なくうなずいた。

「じゃあ、なるべく優しく削ってあげるよ。ゆっくり入ってね」鉛筆削りはやさしく言葉をかけた。子分の鉛筆削りは、悪い鉛筆から離れようとした時、とつぜん振り返って悪い鉛筆の体に鉄芯の先を向け飛びかかった。驚いた悪い鉛筆はとっさに身を引いて避けようとしたが、子分の勢いが勝って、悪い鉛筆の体は真っ二つに折れてしまった。

「う、裏切ったなお前…」うめき声を上げ子分の鉛筆を睨みつけながら、悪い鉛筆は息絶えてしまう。子分の鉛筆から真相を聞いた鉛筆削りは、黙って子分の鉛筆の肩に手をやった。

「ありがとう。おかげで命拾いしたよ」鉛筆削りの慰めの言葉に、子分の鉛筆はうなだれて、ただ涙を流すばかりだった。

反省

おとぎ話のつもりで始めたのに、なんだか生なましくなってしまった感がある。おとぎ話風に表現するのって意外に難しいと思った。

最終目的はおとぎ話を目指しているわけではないので、練習段階の修行としては、こんな感じでもいいと思っている。

とにかく、ひとつの物語を最後まで完成させる力を身に着けたいのが今の課題なのだ。

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