
自分の身近なことを元にして物語のアイデアを考えている。身近なことの中に、「自分の嫌なこと」がある。
自分の嫌なことは、自分を悩ませたり、自信を無くさせたりすることなので、かなり身近なことと言って良い。
自分の嫌なことは、いつも頭から離れなかったり、なんとかしたいと思っていたりするので、それに対する思い入れが深い。
だから、物語を考えるテーマの元として使うには良い素材だ。
私の嫌なことを列挙すると
自分の嫌なことを改めて考えることはあまりない。嫌なことは、できれば考えたくないからだ。
多くの場合、自分が嫌だと思うことは自分の欠点と重なる。自分が嫌なことを披露するのは、自分の欠点を白状するのと同じような恥ずかしさがある。
- 私は人前で自分の意見を主張するのが嫌いだ。
- 私は大勢でカラオケで歌うのが嫌いだ。
- 私は家族でベタベタするのが嫌いだ。
- 私は団体行動が嫌いだ。
- 私は他人と競争するのが嫌いだ。
- 私は決断を迫られることが嫌いだ。
- 私は親戚付き合いが嫌いだ。
まだまだいくらでも挙げられるがこの辺にしておこう。
こうしてみると、「嫌い」という概念が揺らいでくる。というのは、これらの嫌いなことは、案外本心では好きだったりする疑いがあるからだ。
- 私は人前で「立派なことを」言ったりする時快感を覚える。
- 私は自分が好きな歌を人に聞かせて得意になる。
- 私は家族に冷たくされると不機嫌になる。
- 私はツアー旅行が好きだったりする。
- 私は他人に優越感を持つ性質も自覚している。
- 私はリーダーに憧れたり嫉妬したりする。
- 私は血を分けた姻戚に他にはない心を許す部分もある。
おそらく、自分が嫌いと思っていることは、自分の願望が叶わないことをごまかす反動なのだろう。
いずれにしても、自分が執着していることに変わりはない。執着の度合いが強いほど、自分らしい物語の素材になるだろう。
もしも私が究極の決断を迫られたとしたら?
私の嫌いなことの中から一つを選んで、有り得ない状況を想像しながら物語を考えてみたい。
- 私はロープで縛られて、薄暗い部屋の中央に座らされている。私の前には悪人らしき男がナイフを持って立っている。男の横には、私の妻と息子が私と同じ様に縛られて怯えている。
- 「どちらを殺すか決めろ!」男はナイフをちらつかせて私に返事を求めるが、私は何も答えることはできない。
- 何度も答えを求める男は、私が震えているだけなのにしびれをきらし、私の顔にナイフを押し当てる。「さあ、どちらを殺すか決めろ!さもないと、お前の顔を切り裂くぞ!」
- どんなに責められても、私には答えられない。右手と左手のどちらを切り落とすのかと迫られているのと同じだからだ。
- こんな極限状態の中で、私はこれまでの人生で何かを決断したことことがあったろうか?という疑問が頭の中に浮かぶ。
- 男のナイフが私の口をこじ開けて入ってくる。男は一気に私の口の左の端を切り裂いた。私は溢れ出る自分の血の生温かさを感じた。
- 私の妻と息子は目をそらすと泣き叫びだした。男は黙って私達3人を眺め回しながら、辟易したような顔をしている。
- 「くだらねえ。くだらねえんだよ」男はそういうと、更に苛立ったか、私の口の右端も切り裂いた。
- 私は口を切り裂かれたことで、返って気が楽になった。男に答えなくても良いと思えたからだ。
- しかし、男は諦めなかった。鮮血で真っ赤になった私の顔を持ち上げて言った。「どっちを先に殺すんだよ?え?」
- 私が答えることができないでいると、男は私の鼻を掴むと鼻の先を切り落とした。
- 不思議と私は痛みを感じなくなっていた。鼻の痛みよりも口を切られた痛みの方が勝っていたからかもしれない。
- それから男は私の両手の指、両足の指の順に切り落としていった。
- 妻と息子はもう私の方を見ることができなくなって、ただ震えて泣いていた。
- 「くだらねえ。家族なんて殺したっていいだろがよ?」男は血に濡れた手をタオルで拭きながら言った。「あんた、このまま切り刻まれて死ぬよ!」
- 私は思った。このまま私は男に体を少しづつ切り落とされながら死んでいくのかと。それでも、私には妻と息子のどちらを殺すことも決められられなかった。
- 気絶しそうになる私の体に男は何かの液体を注射した。すると私のうつろだった意識は鮮明になった。
- 男はナイフよりも大きな刃物を取り出すと、私の左手、右手、そして左足、右足と切り落としていった。妻と息子はその様子を見て気を失った。
- 「あんた、本当に死んでもいいようだな?」男の声には落胆したような優しさがあった。男は細いロープで私の首を締めはじめた。
- 私は薄れていく意識の中で感じた。私は家族を殺すことを決めない決断をした。初めて決断らしいことをしたんだと。
感想と反省
自分の手に負えない大きなテーマを選んでしまった。家族とか自分の生死など私には荷が重すぎた。
テーマが大きすぎて物語が展開しない。極限状態の前後の話が思いつかなかった。
もっと小さなテーマでないと物語をまとめられない。大きなテーマは類型的な展開に逃げてしまう。自分の中にコントロールする力量がないからだ。
「ラーメンかカツ丼のどちらを選ぶか?」レベルの決断をテーマにした方が身の丈に合っていると思った。
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